サクラクエスト

以上が初期プロットである。本編をご覧になった方はあまりの違いに驚くことだろう。だがこのくらいは序の口だ。この話数に関してはストーリーの肝もしっかり掴めたので迷走することはなかった。

とはいえ初めて仕事する相手にはいつも緊張する。しかもあの『SHIROBAKO』に続くお仕事シリーズ第3弾ということもあり、プレッシャーはかなり感じていた。
打ち合わせ後に増井監督と電車に乗り合わせた際、気になって問うてみた。
「僕、大丈夫ですか?トンチンカンなこと言ってませんか?」
すると監督。
「いやいや入江さんのプロット面白いですよ。毒気があるの好きなんで、ニヤリとしつつ読んでます」
この言葉にどれほど勇気を得たことか。いつもの自分でいいんだ、と。

さて、今回のメインは真希である。そもそも彼女がどうして東京から地元へ逃げ帰ったのか裏設定は決まっておらず、私が想像で補うしかなかった。ではロケに来た監督と真希に因縁を持たせたら面白いだろう、と。監督のキャラがまだまともなのはそのためであり、女優・澤野萌も存在していない。
真希が監督に引導を渡された理由が自己中演技のせいだというのは、文字として読めば分かるがアニメだと伝わりにくい懸念があった。打ち合わせの中で「後輩に追い抜かれる方が分かりやすいしきついですよね」という意見があり、直す方向に。

ひとまず箇条書き程度に直しのポイントを列挙したものが以下である。今回は各キャラごとの動きや心情変化を軸に構成してみた。

『サクラクエスト』6、7話プロット直しメモ

【由乃】
○ロケ隊への対応
・数シーンの撮影だけでは間野山の宣伝にはならない
・画になる場所が多い、自治体が協力的といった理由でロケ地として評判になれば人はやってくる→キャストのアテンドや炊き出しなどを頑張る
・エキストラが意外と集まらない、炊き出しに失敗するなど
○セリフ付き女優がドタキャン
・真希を代役として推薦→「余計なことしないで」と真希に怒られる
○空き家を撮影で取り壊すため所有者確認に奔走
・観光協会の不手際で所有者を確認していなかった
・対象は3軒、うち1軒だけどうしても分からない
・実は知っていたしおりと口論になってしまう(しおりには個人的な思い入れあり)
・空回りばかりしている自分がイヤになる
・しおりの気持ちを知り、空き家の取り壊しに躊躇するようになる
・でも結局は取り壊すことに
・せめてもの想い出に、と柱の一部を譲り受けて木彫り師の一志(or辰男)に何かオブジェを彫ってもらうとか(この行為自体が伝統文化存続のヒントになるかも)
○ロケ地「間野山」定着の兆し?
・自由にやれるということで監督やスタッフからは概ね評判、少しだけ努力が報われる

【真希】
○ヒロイン萌との因縁
・同じ劇団の後輩だった萌の大抜擢に動揺
・萌の才能に敗北を感じ、故郷に戻った経緯
・プライドの高さゆえ由乃の代役提案に怒ってしまう
・萌との対話、表舞台で輝く人間とは
○実家との確執
・実家には決して戻らない、両親にも会わない
・裏方として生きることを模索していく
・その姿を見た父親、少しだけ真希のことを認める

【しおり】
○由乃とロケ隊に協力
・割と(かなり?)ミーハーでいつもよりテンション高い
○空き家の一軒が馴染みのおばあちゃんの家だった
・昨年亡くなって空き家になっている
・息子夫婦の所在も知っているが、取り壊されるのがイヤで黙っている→由乃と口論
・結局、想い出を残すより今誰かの役に立つ方がいいと考えを改める

【早苗】
○由乃とロケ隊に協力
・間野山自体を売り込もうと監督に企画書なんかを出したりするが、失敗
・単にロケ地だけなら他に適した場所はいくらでもあると言われ、色々考え直す

【凛々子】
○実は葉山大雅のファン
・遠目に見るだけで赤面してしまう
・代役の真希のさらに代役で葉山と絡むことになるが、緊張で使い物にならない

【丑松】
○エキストラ出演に上機嫌
・しかしいつの間にかゾンビ役になっており、激怒

【5人全員】
○水着エキストラに駆り出される
・ゾンビの高見沢に追い回されるシーン
・アレックス?が不気味な感じで映り込んでいて、映画公開後に心霊スポットとして無駄に有名になる、といったオチ

<了>

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