サクラクエスト

【C級グルメ編】

第8話「妖精のレシピ」(2017/05/24)
第9話「淑女の天秤」(2017/05/31)


続くエピソードも私が連投することに。

「しおりがメイン」「ご当地グルメ」「農業の衰退」といったお題。

さて、困った。ご当地グルメを扱うにあたって、いよいよ架空の町ではやりようがないからである。映画ロケ編は割と汎用性の高いネタだったため、フィクションと現実のすり合わせにそれほど苦労はなかった。だが今回は地方の特産物がどうしても話題に上ってくる。架空の町の架空の特産物でご当地グルメを作っても「知らんがな」となってしまうのだ。

菊池専務に掛け合い、富山県と明言できるようになった。後はひたすら調べるのみである。富山の歴史や地理的特徴、富山湾では昆布が採れないのに消費量が全国一である理由、等々。

今回はしおりがメインだが、実のところドラマを立てるのが一番難しいキャラである。他の4人はそれぞれ挫折した過去だったりコンプレックスだったりがあるからやりようはある。だがしおりは良くも悪くも何の問題も抱えていない。観光協会に入ったのも特に志があったわけでもなく、今までの生活がずっと続くんだと思っている。マイナスからプラスへ転じるのがドラマの基本だとすれば、何も欲していないがゆえに最も変化させにくいキャラなのだ。また早苗編と真希編で似たようなパターンが続いてしまったため、降りる降りないといった手は使えない。

それでも無理矢理に実はこんな問題を抱えていました、というやり方もあるにはあるが、たぶん一番やってはいけないパターンだ。こちらの都合でキャラをいじるのは悪手以外の何物でもない。

ひとまず、例によって最初期のプロットを掲載しよう。
映画ロケ編以上に完成品とは全くかけ離れていることに驚かれることだろう。
なお小森とは後の熊野である。

『サクラクエスト』8、9話プロット(16/05/07)

#8
〇丑松が市役所に掛け合い、期間限定で食堂にご当地グルメを置くことに。
 市民からアイディアを募り、選ばれたメニューは食堂で提供されるほかご当地グルメとして外部にも展開していくという。観光協会としては負けるわけにはいかない。張り切る由乃ら。

〇四宮家で昼食
 連日の暑さにバテ気味の由乃ら。しおりが誘って自宅でそうめんを振る舞う。家には夏期休暇中の姉・さゆりもいる。OLで自宅から通えないこともないが、街でアパートに一人暮らししている(高岡市辺りのイメージ)。
 そうめんの独特な食感に気付く由乃。間野山で伝統的な製法で作られている手延べそうめんらしい(大門素麺のイメージ)。機械式よりもコシがあり、一般的なそうめんと違って伸ばすときに油を使わないためヘルシーだという。
由乃「このおつゆもなんか独特だよね」
 つゆに炒り卵が入っていたりする。
しおり「え?ウチじゃ普通だけど」
凛々子「ウチも……」
真希「ウチもだったな」
 間野山独特の風習らしい。意外にも富山(って言っていいんでしょうか?)はそうめんの消費量が多いそうだ。
由乃「じゃあ、そうめんを使ったご当地グルメを考えようよ。そうめんってどこにでもあるけど、ここでしか食べられないメニューってなかなかないでしょ?」
しおり「いいね!」
 こうしてそれぞれがアイディアを考え、後日試作品を持ち寄ることに。

〇さゆりが家族を連れてお気に入りの店へ。
 久しぶりに家族揃っての外食。繁華街にあるイタリアンKOMORIという店。地元の食材にこだわっているらしい。
しおり「うわー、美味しい!」
さゆり「でしょ?しかもここのオーナーシェフ、イケメンなんだよ?」
 東京で修行を積み、30歳の若さで地元に戻り店を開いたという。すると当のシェフ・小森が挨拶に来る。
小森「いかがでしたか?」
 大人の余裕で接する小森だが、実はしおりに一目惚れしていて、厨房でバイトの子に「何あの子めっちゃかわいいやんけ!」とか言っている。イケメンだが色々残念で奥手なタイプ。

〇第一次試食会
 それぞれ持ち寄ったメニューを披露する。
由乃:地獄そうめん
 真っ赤な激辛のつゆで食べるそうめん。暑い夏には辛いものがいい!
しおり:地元の特産物を取り入れたそうめん
 でもなんか地味。
真希:そうめんスイーツ
早苗:ガレット風そうめんクレープ
凛々子:落ち武者饅頭
 白い餅に竹炭を練り込んだ黒いそうめんで毛髪をイメージ。さらにカリッと揚げたそうめん一本を頭にぶっ刺す。
しおり「みんな間野山と何も関係ないじゃん!」
凛々子「私、あるけど……」
由乃「でもインパクトがないと美味しいだけじゃあね……」
 結局もう一度アイディアを出し合うことになる。

〇山菜を採りに山へ入るしおり(夏なので基本、山菜はないのですが……ミョウガとかならアリ?)。
 うっかり道に迷ってしまい、焦るしおり。そこへたまたま居合わせたのは小森だった。彼もまた地元の食材を探しに来ていたのだった。
小森「あ……君は……」
しおり「こないだお店行きました!とっても美味しかったです!」
 思いがけない再会に内心ドキドキしている小森、ひとまずしおりを連れて街へ戻る。
 そんな折、小森のもとへ電話が。バイトが一人辞めるという。
小森「えー、困ったなあ……ランチはともかく、ディナー回せないよ」
しおり「あのー……邪魔になるだけかも知れませんが、お手伝いさせてもらってもよろしいでしょうか?」
小森「え?ええっ?」
 小森の店で働けば何かヒントを得られるかも知れない。しおりにしては随分思い切った決断である。

〇美濃に相談するが、当然反対される。
 しおりも一応公務員、兼業禁止である。仕方なく誰にも内緒で、夜だけ無給で勝手に手伝うことにする。

〇第二次試食会。
 やはり由乃ら4人のメニューは奇抜なものばかり。しおりは小森の店で学んだことを活かせたものの、やはり地味だと突っ込まれる。
しおり「そうかなあ……間野山にあるものを活かさないと、まずは地元の人に受け容れられなきゃ定着しないと思うんだけど」
由乃「その間野山にこれといったものがないから何か生み出そうとしてるんだよ。若者、馬鹿者、よそ者の私たちにしか出来ないことをやるの。って、よそ者は私と早苗ちゃんだけだけど」
しおり「何もないとか……決めつけないでよ。探そうとしてないだけだよ」
 ところで最近、夜見かけないけどどこに行ってるの?と4人から問われ、答えられないしおり。気まずい空気になる。

〇由乃は由乃で必死なのである。国王に就任してから数ヶ月、まだこれといった結果を出していない。その焦りからさらにぶっ飛んだアイディアを提案する。
由乃「名付けて、万国そうめん!」
 5色そうめんではなく、つゆの方が5色ある。赤はロシアのボルシチ。緑はタイのグリーンカレー。黄色はインドカレー。白はフランスのシチュー、黒は日本の醤油。
由乃「勝手にそうめんで世界平和を願っちゃうの。そんで各国と姉妹都市になるの。ロシアなんか広いからどこか提携してくれるでしょ!」
真希「うわー、めちゃくちゃだわ。でもなんかいいかも」
しおり「良くないよ!」

〇しかし結局、万国そうめんは落選。
 コストや手間が掛かりすぎるのが原因だった。落胆する由乃ら。
由乃「よーし、じゃあ今度は自分たちで町おこしグルメを作っちゃおう!」
 宇都宮の餃子、富士宮の焼きそば。観光客を呼べるくらいの何かを定着させるんだ、と決意する。

〇一方のしおりは小森から「俺と付き合って下さい」と求愛され、大いに迷う。
小森「俺なら君に新しい世界を見せてあげられる。きっと毎日楽しいと思うよ」
しおり「少し……考えさせてもらえますか?」

#9
〇ご当地グルメのアイディア出し。
 色々考えてみたものの、そうめんではやはり弱いという結論に達する。
早苗「メニューそのものじゃなくてさ、何ていうか一緒に体験できることを売りにするとか?」
真希「流しそうめんも体験型、参加型だよね」
由乃「うーん……そうだ!逆にすればいいんだよ!」
真希「逆?」
 由乃が考案したのは流しそうめんの逆、自分たちが流される「流されそうめん」だった。

〇遊園地?
 ウォータースライダーのあるプール。まずはやってみようということで、水着の由乃らがスタンバイしている。発泡スチロールのカップにつゆを入れ、そのままハーフパイプを滑っていく。途中で給水所ならぬ給麺所があり、そこを通過する際に手づかみでそうめんをゲットし、つゆにつけて食べるのである。
 由乃が実際にやってみるが、全くつかむことが出来ない。
由乃「やっぱりダメみたい……面白いと思ったんだけどな」
 呆れるしおり。
しおり「こういうことじゃないと思うんだけど……」
 またも5人の雰囲気は悪くなってしまう。

〇そんな折、さゆりが由乃らと会う。
 しおりが毎晩何をしているか、さゆりの説明でようやく知る由乃ら。
由乃「そうだったんだ……言ってくれれば良かったのに」
さゆり「まあ一応ナイショでやってるからね。でも私、正直びっくりしてる。昔のあの子だったら絶対こんなことはしなかった。石橋は叩いても渡らないくらいの超保守主義なのよあの子。あなたたちと出会ってからかな、多分……ありがとね」

〇しおりの思いを知り、しっかり間野山の風土について考える由乃。
 どうしてそうめんの消費量が多いのか。それは豪雪地帯で保存食が必要だったからという、その土地ならではの理由もあった。独特の食べ方にもちゃんと理由があったり、調べれば調べるほど食は歴史や風土と密接に結び付いているのだと気付く由乃。
 そんな中、実は富山は昆布の消費量も全国一だと知る。これにも理由があり、北海道からの貿易船が富山湾で荷下ろしするからだそうだ。
由乃「昆布か……」

〇同じ頃、しおりもまた昆布に着目していた。
 普段何気なく食べているものだが、かく言う自分もあまり深く考えたことはなかったのだ。

〇早速、昆布とそうめんを使ったメニューを考案し、小森に試食してもらうしおり。小森はお世辞抜きに褒める。
小森「その地域に根付くものってこういうことなんだよね。シンプルだけど、とてもいいと思うよ」
しおり「……ありがとうございます!」

〇試作品を持ち寄る由乃としおり。
 出来上がったものはまるで違うが、奇しくも二人とも昆布を使ったメニューだった。
早苗「ふふっ。あんた達、足して二で割ればちょうどいいのにね」
由乃「しおりちゃん、ごめんね。私、国王として結果出さなきゃって焦ってて……これじゃ国王っていうか破壊王だよね」
しおり「ううん。むしろどんどんぶっ壊してよ!いざとなったら私がブレーキかけるから」

〇しおりと由乃の案を折衷したメニューが小森の店にも置かれることになる。アンジェリカもちょっとアレンジして採用したり。常連の高見沢辺りの評価も悪くないようだ。郷土料理というのはこうやって徐々に浸透していくものなのかも知れない。ほんの少し手応えを感じる由乃らで。

〇一方、しおりは悩んだ末に小森からの求愛を断る。
しおり「私は危なっかしい国王を支えていかなきゃいけないので。あと私、今の生活楽しいですよ」

<了>

初期プロットではしおりにドラマが全くないことが分かる。
女の子5人がわちゃわちゃやって町おこしの上っ面を舐めただけ。これではどうしようもない。またJUMBO齋藤氏から「恋愛要素はマジでホントにやめましょう」と口酸っぱく言われているので、ただでさえ少ない手持ちのカードはさらに限られている。

では相手が一方的に想いを寄せるパターンなら辛うじてアリだろうと考え、残念なイケメン・小森を設定したのだが、これもあまり機能していない。姉のさゆりにも必要性を感じない。

やはり全てはしおりが能動的でないことが原因なのである。

そこで発想を変えた。無理に成長させなくてもいい。今回は生まれて初めて何かをしたという一点に絞ろう、と。

この子はたぶん自分のためより人のために頑張れるタイプだ。では由乃のために生まれて初めて能動的に動くことを決意するというのはどうだろう。前回のエピソードで心を救ってくれた由乃を今度は自分が守るんだ、と。それだけで十分盛り上がるはずだ。

この発想に到達した時点で、今回のストーリーは固まったも同然だった。

後に提出したプロット直しはキャラの役割に多少の変更はあるものの、ほぼ完成品に近い。
少し長いが、それも掲載しておこう。

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