サクラクエスト

『サクラクエスト』8、9話プロット直し(16/05/12)

#8
〇何故か渓流でしおりが流されている。
しおり「助けてーっ!」
 気がつけばしおりは岸辺に横たわっていた。
声「あ、良かった。気がついたかい?」
 逆光でよく見えないが、どうやらその男性がしおりを救ってくれたらしい。

〇話は数日前に遡る。四宮家の麦刈りを手伝う由乃ら。
 遅れて参加したのはしおりの姉・さゆり。普段は市内の総合病院で小児科の看護師として働いている。
さゆり「ごめんなさーい。道に迷ったおじいちゃんの道案内してたら、私が迷っちゃった」
 どうやら家族揃って天然らしい。

〇四宮家でお礼に昼食をご馳走になる由乃ら。
 しおり、さゆりと母の千賀子、そして祖母の手料理(祖父は入院中という設定でいいでしょうか?)。素朴ながら美味しい田舎料理。
由乃「すごいね、しおりちゃん家って」
しおり「そんなことないよー、ただのそうめんだし」
早苗「このおつゆもなんか独特だよね」
 つゆに炒り卵が入っていたりする。
しおり「え?ウチじゃ普通だけど」
凛々子「ウチは黒酢……」
真希「ウチはみかんが乗ってたな」
 各家庭それぞれ食べ方があるらしい。意外にも富山はそうめんの消費量が多いそうだ。
しおり「でもこうしてみんなでワイワイご飯食べられるのって楽しいね。同世代の友達、殆ど町を出てっちゃったから」
 兼業農家のどこにでもある中流家庭で育ったしおり。
しおり「いずれは結婚して農業やりながら旦那さんのお仕事を支えていくの。そんな幸せがずっと続くといいなあ」
 一度も家を出たことがなく、バイト経験もないまま、親の勧めで何となく観光協会に団体職員として入った。もちろん腰掛けである。その後の人生もいずれ出会うであろう夫が導いてくれるのだろう。良いも悪いもない。しおりはそんな自分の生き方を疑問に思うこともなかった。そんなしおりを見て少し表情を曇らせる父・貴之で。

〇王宮でそれぞれ料理の試作品を持ち寄る由乃ら。
 由乃が以前から企画を進めている「チュパカブラ王国名物C級グルメ」として出すための料理を開発中なのだ。
由乃「C級といってもChampionのCなのよ!これじゃあ全然ダメだわ」
 真希は量で勝負の大雑把な料理。早苗はただのインスタント食品にひと味加えただけ。凛々子は芋虫の形をしたチョココルネ。
真希「いやいや、あんたのスイカの天ぷらの方がヤバいよ。食べ合わせって言葉知らないの?」
しおり「ていうか、みんなの料理って間野山何も関係ないよね……」
 そう言うしおりの料理はカブのそぼろあんかけ。味は群を抜いているが、とにかく地味である。
 早苗が今回のプロジェクトリーダーはしおりが適任ではないかと提案。
早苗「下手に国王に任すと食中毒とか出そうだし。やっぱ料理はしおりでしょー」
 他の4人も同意するが、しおりは頑なに断る。
しおり「私、リーダーとかホント無理だから。出来ないって」
 これまで副委員長や副部長は経験があるが、トップに立って何かをしたことはないという。
しおり「私は陰で誰かを支えるのが向いてるの」
 消極的な割に頑固なしおり。結局、リーダーはそのまま由乃で続行ということに。新たな食材探しに渓流へ行くことになる。
由乃「今は川魚の季節!みんなで釣りに行こう!」

〇というわけで冒頭に戻る。
 しおりは由乃らとはぐれ、山道で熊に遭遇。慌てて逃げるうち川に落ち、流されていたところを男性に助けられたのだ。
男「良かった。無事で」
しおり「あの……あなたは……?」
 男は熊野という30代の男性。イワナを釣りに来たところ、溺れているしおりを見つけ救助したという。決してイケメンではないが、穏やかな雰囲気。ドラマティックな出会いに内心ときめくしおり。
しおり「本当にありがとうございました。あの、何かお礼を……」
熊野「じゃあ今度ウチに食べに来て下さい」
 名刺を渡し、去っていく熊野。『bistro Montagne(モンターニュ)』とある。
しおり「ビストロ……?」

〇由乃らと合流するしおり。
真希「何なに?熊に襲われて熊に助けられたの?」
しおり「熊じゃないよー、熊野さんだって」
早苗「あららー?ひょっとして恋が芽生えちゃったとか?」
しおり「そんなんじゃないってば!」
 顔を赤くして否定するしおり。当然のごとく恋愛も自分から動いたことはないわけだが、今回はお礼をするという口実がある。

〇早速、家族で熊野の店へ食事に行くしおり。
 オシャレだが堅苦しくない雰囲気の、間野山唯一のフランス料理店。熊野はシェフとしてメニューの考案から全てプロデュースしているという。
しおり「わあ、美味しい!」
 山で採れたミョウガや渓流のイワナも、熊野にかかれば洗練されたフレンチに早変わり。熊野は本場フランスで修行後、間野山へ戻り、オーナーと共同で店を開いた。地産地消、地元の食材を使うことにこだわっている。
貴之「ウチの娘を助けて下さったそうで。本当にありがとうございます。料理も素晴らしいです。失礼ですが、熊野さんは独身ですか?」
熊野「はい?ええ、そうですが」
貴之「ぜひウチの娘を!」
しおり「ちょっとお父さんったら、やめてよこんなところで……」
 モジモジするしおりをやたらと囃し立てる貴之ら。
熊野「いえいえ、こんな美人な娘さん、僕にはもったいないですよ」
 熊野もまんざらではなさそうで。

〇一方の由乃はC級グルメイベントの準備を着々と進めていく。
 日程を決め、ポスターも自分で作り、丑松から承認を得る。
丑松「うむ……良かろう。張り切っておるな、国王」
由乃「はい!絶対この企画で観光客呼んでみせますから!」

〇千登勢も何やらイベントの準備に忙しそうである。
 珍しく張り切っている千登勢。毎年恒例のチャリティーバザーらしい。商工会にとっては大事なイベントのようだ。

〇第二次試食会。
 やはり由乃ら4人のメニューは奇抜なものばかり。しおりは地元の食材をうまく取り込んでいるものの、やはり地味だと突っ込まれる。
しおり「そうかなあ……間野山にあるものを活かさないと、まずは地元の人に受け容れられなきゃ定着しないと思うんだけど」
由乃「その間野山にこれといったものがないから何か生み出そうとしてるんだよ。若者、馬鹿者、よそ者の私たちにしか出来ないことをやるの。って、よそ者は私と早苗ちゃんだけだけど」
しおり「何もないとか……決めつけないでよ。探そうとしてないだけだよ。間野山は豊かなところなんだよ」
由乃「だったら町おこしなんか必要なくない?」
 気まずい雰囲気になる由乃としおり。

〇しょんぼり帰宅したしおりを貴之が犬の散歩に誘う。
しおり「珍しいね、お父さんと二人で散歩なんて」
 隣の畑にさしかかる。
貴之「しおり……実はな」
 言いにくそうに切り出す貴之。隣の家が近々田畑を手放すらしい。高齢の夫婦が二人で続けていたのだが、そろそろ年齢的にも限界だという。後継者もいない。
貴之「これがウチにも関係のある話なんだ」
 農機具やトラクターなどの農業機械は近隣の農家でシェアしている場合が多い。その方が維持費や購入費を抑えられるからだ。リタイアする農家が増えれば、まだ続けている農家の負担も増えることになってしまう。
貴之「とはいえ父さんも母さんもまだ元気だし、10年くらいは大丈夫だろう。でもその先は分からない。農産物はもともと外国産に押されてるし、日本の人口は減る一方だし。お前の将来の旦那さんに継いでもらうのも正直、気が引けるんだ」
 幸い兼業農家なので無理に農業を続けていく必要もない。
貴之「いつまでも変わらない生活なんてない、今までがたまたま変わらずにいられただけだ。これからはお前の好きなように生きなさい。ウチに気を遣う必要なんかないからな」
しおり「うん……」
 突然、好きに生きろと言われても困る。今まで親の敷いたレールの上しか歩んでこなかったのだ。だがそれ以上に、地元の衰退がこんな身近にまで迫っていたことに驚くしおり。
しおり「私……何も見えてなかったんだね。ずっとこの町にいたのに」

〇後日、千登勢が観光協会に怒鳴り込んでくる。
千登勢「ジジイ!これは一体どういうことだい!」
 千登勢の手には由乃が作ったC級グルメのポスターが。そしてもう一方の手には商工会主催のチャリティーバザーのチラシが。
千登勢「よりによってウチのイベントと同じ日にぶつけてくるなんて。あんたらケンカ売ってんのかい!」
由乃「え……」
 印刷所の人間が千登勢に報告して発覚したらしい。由乃の痛恨のミスである。たとえどんなイベントであろうと商工会にお伺いを立てるのが暗黙のルールになっているのを完全に無視した形になったのだ。
(※12、13話とかぶらない程度に観光協会と商工会の具体的かつ深刻な対立を描いておきたいです)
千登勢「国王さんよ、あんたが考えたことなのかい。余計なことばかりしてくれるねえ、よそ者が。あんたのやってることなんざ所詮自己満足さ。私らはそもそも来てくれなんて頼んでないんだよ」
由乃「……!」
 憤然と去っていく千登勢。大いにショックを受ける由乃。それが町の人々の本音だったのか。何より、自分のせいで町に迷惑を掛けてしまった。それは由乃にとって耐え難い痛みだった。
由乃「皆さん、すみませんでした……。私、役に立たないばかりか町に損害まで与えてしまって。町の人の税金で雇われてるのに……。こんなダメな国王、もうクビにして下さい……」
しおり「由乃ちゃん、どんまいだよ。そもそも日程を確認しなかった私たち全員に責任があるんだし……とにかくみんなで謝りに行きましょう」
 丑松は渋い顔をするが、こうなった以上は仕方ない。

〇商工会に謝りに行く観光協会の面々。
 千登勢の怒りはまだ収まらない。それどころか、積年の恨みを晴らすかのごとく丑松との因縁をあげつらう。
千登勢「あんたはいっつもそうだ。カブラ王国をしょうもないブームに便乗してチュパカブラ王国にした。そこまではまだ我慢してやる。けどあんたはその時何をした!けったいな饅頭を勝手に売り出して、その小麦はどこ産だ!小豆は!間野山とは縁もゆかりもない安い外国産だろう!」
 悔しさのあまり涙目になっている千登勢。
千登勢「土産物だって、一つとして間野山の業者を使ったものがあるのかい!そりゃあ客が呼べればあんたらにとっちゃ成功だろうよ、けどそんなものが町おこしだなんて言えるのかい!」
(※ヒントを言い過ぎ?相談させて下さい)
 いつもなら売り言葉に買い言葉でケンカになってしまう丑松だが、今回ばかりは潔く頭を下げる。
丑松「すまーん!!今回はワシの責任じゃ。若いもんを責めんでやってくれ」
由乃「会長……」
千登勢「それじゃあこの落とし前をどうつけるつもりだい?あんたが責任取って辞めるのかい?」
由乃「いえ、国王である私が……」
しおり「ダメですっ!!」
 突如、しおりが声を上げた。
しおり「私に、考えさせて下さい。必ず見つけますから。商工会の皆さんも、私たち観光協会も、いえ、間野山の人みんなが笑顔になれるアイディアを……!」
 これまで一度として自分から動いたことのないしおりがついに動いた。由乃という大切な仲間を守るために。
しおり「私が、国王代理として……今回の件、仕切らせてもらいます!」

#9
〇商工会を後にする由乃ら。
 全員の前で啖呵を切ってしまったしおり。
しおり「あー……まだ体が震えてるよ……」
由乃「ごめんね、しおりちゃん」
早苗「で、どうするの?何か名案はあるわけ?」
しおり「ううん。まだ何も……」
真希「ええっ!勢いで言っちゃっただけ!?」
しおり「自分でもびっくりしてる。けどこうなった以上はやるしかないよね」
 観光協会も商工会も、今さらイベントを中止するわけにはいかない。何らかの形で両者の共同開催という方向へ持っていくしかない。

〇織部家
 千登勢の怒りにより凛々子は家に連れ戻され、しばらく行動が制限されてしまう。
千登勢「あんたには観光協会の動きを逐一報告するように言っといたはずだよ。私の言うことなんかちっとも聞きやしない……そういうところ、母親にそっくりだね」
(※次回の凛々子編への前振りみたいなものを入れられれば、と思います)

〇凛々子以外の4人は腹ごしらえということで四宮家へ。
 結局またそうめん。食べながら何かをひらめくしおり。
しおり「……そうだ!そうめんを使ったお料理っていうテーマはどうかな?そうめんって色んなバリエーションがあるし間野山でも生産されてるし、そこの商品を使えば地産地消にもなるから商工会の顔も立つよ」
由乃「いいね!だったらいっそコンテスト形式にしようよ!会長とか千登勢さんとか審査員にして」
しおり「うんうん!じゃあ私たちだけじゃなくて町の人みんな応募できるようにして、みんなの家庭からアイディアを集めちゃおう」
早苗「家によって色々変わった食べ方あるだろうしね」
しおり「それで優勝した人の料理は王国の定番メニューにして」
真希「ついでに市役所の食堂にも置いてもらおうよ」
しおり「名付けて……『そうめんグランプリ』!」
 大いに盛り上がる5人。

〇早速、丑松に趣旨を伝えるしおり。
 丑松もその案に賛同する。
丑松「よし、それなら当日は王国を入場無料にし、商工会のバザーもその中でやれるようにしよう。町の人間も外の人間もまとめて取り込むんじゃ」
しおり「はい!」
丑松「ただし……やるからには絶対優勝するんじゃぞ。間違っても商工会の連中になど負けてはならん。いいな!」

〇熊野の店へアドバイスを請いに行くしおり。
 突然の訪問に熊野は驚くが、何やら嬉しそうでもある。
しおり「熊野さんが間野山でお店をやることについてどのように考えてらっしゃるのか、訊いてみたくて……」
 地産地消、地元の食材を使うという方向性に間違いはないはずだ。しかし先日由乃が言っていたように、確かに間野山にはこれといった名産がない。カブがあるにはあるが、旬の問題で年中供給できるものではない。
熊野「なるほどね……。僕はその時々で美味しいと思う食材をアレンジして使うやり方だけど、町の名物として定着させるとなると話はまた別だよね」
しおり「そうなんです。私は町のことをまだまだ知らないのかなあ、って」
熊野「いや、灯台下暗しってこともあるかもね。当たり前すぎて気付いていないこととか」

〇改めて間野山の風土について考えてみるしおり。
 たとえばどうしてそうめんの消費量が多いのか。それは豪雪地帯で保存食が必要だったからという、その土地ならではの理由もあった。独特の食べ方にもちゃんと理由があったり、調べれば調べるほど食は歴史や風土と密接に結び付いているのだと気付く。
 そんな中、食卓にやたら出てくる昆布にも着目するしおり。だしを取る他に昆布締め、とろろ昆布など、普段何気なく食べているものだが、あまり深く考えたことはなかった。
しおり「灯台下暗し……」
 調べたところ、富山は昆布の消費量が全国一だと知る。これにも理由があり、北海道からの貿易船が富山湾で荷下ろしするからだそうだ。
しおり「昆布か……」

〇王宮をしおりが訪ねると、由乃が疲れた様子で戻って来た。
 これまで商店街を中心に一軒ずつ回ってそうめんグランプリのことを告知していたという。
由乃「やらかしちゃったことは仕方ない。いつまでも引きずってたらそれこそ町の人にとって何の役にも立たない王様になっちゃうからね。立ち直りの早さだけが私の武器なの」
しおり「由乃ちゃん……」
 感心しつつ、そうめん料理についていいアイディアが浮かんだと報告するしおり。
しおり「これから試行錯誤するからまだ完成じゃないんだけど、当日までには間に合わせるから」
由乃「うん、しおりちゃんを信じて任せます。あとね、当日もう一つサプライズイベントを考えちゃったんだけど……」
 そうめんを使ったお客さん参加型のイケてるイベントらしい。何やらフフフと企み顔を浮かべる由乃にやや不安を覚えるも、今はとにかく応募作を頑張ろうと思うしおり。

〇グランプリ当日。
 由乃の呼び掛けもあり、まずまずの盛況。商工会主催のチャリティーバザーの後にそうめんグランプリが行われる予定だが、そこへ何故か水着の由乃が登場する。
由乃「皆さん、流しそうめんはもう古いです!これからは流されそうめんの時代ですよ!」
しおり「流されそうめん……?」
 ハーフパイプをつなげたものに上流から水が流れている。
由乃「試しにまずは私がやってみますねー」
 発泡スチロールのカップにつゆを入れ、そのままハーフパイプを滑っていく。途中で給水所ならぬ給麺所があり、そこを通過する際に手づかみでそうめんをゲットし、つゆにつけて食べるのである。
しおり「こないだドヤ顔で言ってたイベントって、これだったの……?」
 呆れ返るしおり。しかも言い出しっぺのくせに全くそうめんをつかむことが出来ない。子供受けは良かったものの、イベントとしては大失敗である。
由乃「ごめんなさい……面白いと思ったんだけどな」

〇そうめんグランプリ開始。
 審査員として丑松や千登勢の他にアンジェリカや熊野も呼ばれている。工夫を凝らした様々なそうめん料理が出される中、しおりが満を持して出したのはとろろ昆布を使ったそうめんだった。つゆにつけて食べるのではなく、油そばのようなもの。水気を切ったそうめんを器に盛り、とろろ昆布、オクラ、納豆、山芋のすり下ろしなどを載せる。ごま油で和えたたれを一回し上からかけ、よく混ぜて食べるというもの。
しおり「特に目新しいものではないかも知れません。ですが昆布もそうめんと並んで間野山で昔から親しまれているものです。とろろ昆布は細かく裂かれているのでミネラルや食物繊維が吸収されやすく、逆に脂肪の吸収は抑えてくれます。ダイエットにもいいですし、昆布にはバストアップ効果のあるボロンという物質が含まれているそうです。ボロンは熱を加えると壊れちゃうんですが、この調理法だとそのまま摂取することが出来ます」
 しおりらしい地味な料理であるが、味はかなりのもの。審査員の熊野がコメントを寄せる。
熊野「地産地消という点からは離れてしまうかも知れませんが、目の付け所は非常にいいと思います。昔から親しまれている食材にはその風土や歴史に裏付けられた理由があるものです。これが将来の郷土料理へと繋がっていくといいなあと思います」

〇結果発表。
 優勝したのは主婦が考案したそうめんレシピだった。しおりは優勝を逃したものの、手応えは感じたようだ。早速、熊野にお礼を言いに行くしおり。
しおり「今回は本当に色々とありがとうございました」
熊野「頑張って答えを出したね、しおりちゃん。よくやったよ」
 熊野に褒められ、照れるしおり。
熊野「あの、それで君にたってのお願いがあるんだけど……」
しおり「な、何でしょう……?」
 ドキドキするしおり。
熊野「正直に告白します。君のお姉さんの連絡先、教えて下さい!」
しおり「え……」
 どうやら初めて来店した時から惹かれていたらしい。しおりの淡い恋は儚く散ってしまった。
 一方の由乃は流されそうめんの大失敗に凹んでいた。二人してしょんぼりの由乃としおりを励ます早苗ら。
早苗「ンなもん、しょうがないでしょ。後先考えないけど勢いのある国王と、堅実すぎて地味な副国王か。ふふっ。あんた達、足して二で割ればちょうどいいのにね」
由乃「……これじゃ国王っていうか破壊王だよね」
しおり「ううん。むしろどんどんぶっ壊してよ!いざとなったら私がブレーキかけるから」

〇後日、しおりの料理をアレンジしたメニューが熊野の店にも置かれることになる。
 そうめんを短く切って束にしたものにとろろ昆布を載せ、ゼラチンでキューブ型に固めた前菜とか。アンジェリカの店にもちょっとアレンジしたものが置かれたり、常連の高見沢辺りの評価も悪くないようだ。郷土料理というのはこうやって徐々に浸透していくものなのかも知れない。ほんの少し手応えを感じる由乃らで。

<了>

これでほぼ完成品に近付いたわけだが、まださゆりと熊野の役割が十分でない。

どうやらしおりには間を上手く取り持つ才能があるらしい。その象徴として二人を活かせないだろうか。さゆりと熊野は同級生という設定にし、おっちょこちょいのさゆりによって二人はずっとすれ違ったままだったことにする。それがしおりの機転によって結ばれるというサブプロットが生まれ、物語に花を添えることとなる。

ちなみにさゆりが小児科の看護師という設定になったのは、後の話数で少子化問題も扱いたいというPAワークスの要望からであった。その時に既出キャラがいれば話が作りやすいだろうという逆算である。しかしさすがに観光協会の領域ではないですよね、ということでボツになり、設定だけが残った次第である。

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