第13話「マリオネットの饗宴」エア実況。
建国祭当日、プトレマイオス現地入り。
このバンド名にしたのにはワケがある。今や地動説が常識ではあるが、天動説を唱えたプトレマイオスにちなみ、「俺たちが世界の中心なんだよ!」というロック魂の表明のためだ。
メンバーの自己紹介シーンは三段オチを狙った。
「木下です」
「藤吉郎です」
「秀吉です」
みんな太閤殿下(笑)
ちなみに元々は別バンド所属で、現在の編成がたまたまこうなっているだけという設定である。
あと「ウナギの方向で」というのは三谷幸喜監督『みんなのいえ』でのココリコ田中のセリフ「半魚人の方向で」のオマージュ(分かるわけない)。
建国祭開催。
俯き気味に登壇した由乃が恐る恐る顔を上げた瞬間、おびただしい数の客で埋め尽くされた画は圧巻。由乃と同じ感情を共有できる、効果的な演出だ。この回はこういう群衆シーンがやたら多いので作画も大変だったことだろう。
絵コンテ担当は三條なみみさん(公式サイトでも間違えられているが、「ななみ」ではない)。ベテラン監督・難波日登志さんの別名である。後に『ゴールデンカムイ』でご一緒することになろうとは思いも寄らなかった。
王国の国歌を歌い出す由乃。「お前が歌うんかい!」と突っ込んだのはエリカだけではあるまい。少年合唱団、何のために出てきたのか(笑)。一人しかめっ面してるし。
意外なほど盛況の建国祭。
その様子を王宮の屋上から誇らしげに眺めている丑松。
コミカライズ担当の古日向さんはこのシーンを見て泣いたという。
東京に出ることをやめ、この町を変えることを選んだ若き日の丑松。あれから半世紀、(ほぼ失敗ばかりだが)がむしゃらにやってきたことを感慨深く振り返っているのだろう。
ちょっとシナリオにワンシーン加えただけで泣いてくれる人までいるなんて嬉しい限りだ。
ライブ終わりの客を引き込む狙いだったクイズ大会だが、先方のトラブルにより開催時間が被ってしまう。ここでの由乃の判断ミスを誰が責められようか。
つづいてBパート。
クイズ大会が始まった矢先にトラブルから復旧し、ライブが開催されることに。メガホンでアナウンスするスタッフがやけにリアルで上手いんだが、声優さん誰だったっけ。
ここは観ていて本当に切ない。誰が悪いわけでもないだけになおさらである。カメラを止めさせた雨宮の表情が全てを物語っている。
大盛況のプトレマイオスライブ。
この回だけのためにフルコーラスのオリジナル曲を3曲も作ったそうだ。なんと贅沢な。
数字だけ見れば大成功といってもいい建国祭。しかし千登勢は全てを見透かしたかのような表情。ここからの展開は本当に辛いものがある。
店先で打ち水をする靴屋の女主人。前日の朝と全く同じ画を見せることで、建国祭がこの町に何ももたらさなかったことを暗示している。道の真ん中にぽつり佇む由乃の背中が切ない。
クーポンの回収率もゼロに近いうえ、頼みの綱だった『放熱山脈』は由乃らの想いとはまるで違う作りにされていた。「この方が数字取れるんだよ」久米の判断である。初期プロットでは雨宮がやったことにしているが、さすがにそれでは鬼畜すぎると思ったので自主的に直した。
由乃の落ち込みぶりは辛い。実に辛い。だが彼女が町おこしの本質に気付くためにはどうしてもこの過程を描かざるを得ない。それによって離れていく視聴者も少なからずいるだろう。どうか最後まで彼女たちの町おこしを見届けて欲しい。祈るような気持ちでオンエアを迎えたのを覚えている。