第12話「夜明けのギルド」エア実況。
王宮で幼少期の自分の写真を見て決意を新たにする由乃。王国10万人目の来場者として戴冠したエピソード。これまで殆ど触れてこなかったが、回収するなら今がベストだろう。
チュパカブラ王国25周年建国祭の旗揚げをする由乃ら。
北陸きときとテレビの久米と雨宮を連れてきた丑松。語尾がおかしいのは監督の意向(笑)。
さてこの雨宮というキャラ、初めはもっとチャラいキャラだったのだが、それだといかにも建国祭が失敗しそうな雰囲気に見えるので有能クール寄りにした。
「何か特徴的な口癖を設定したいですね」とのJUMBO齋藤氏の提案により、様々な意見が出た。「ヘンな話……は『SHIROBAKO』でやっちゃったしなあ」「ぶっちゃけ、とかベタ過ぎます?」「じゃあ正直、はどうですか?」「いいかも。やたら言う人いるよね」
『放熱山脈』で密着取材を受けることになり、舞い上がる由乃ら。特にしおりの変貌ぶりが凄い(笑)。「ざます」ネタは二話に亘っていじらせてもらった。
サンダルさんが何やら意味不明なことを言っているが、あれはケビン・コスナーのこと。分かるわけない。
由乃だけがこれといったバックストーリーがないことに不満を漏らす雨宮。
「なんか普通なんですよ……」
ここにきて「普通」と言われてしまうことにショックを受ける由乃。無理もない。
そこへフォローのつもりで塩を塗る女、しおり。
「由乃ちゃんは十分、普通じゃないよ」「由乃ちゃんは大器晩成型なんだよ」
どうも私が描くとしおりは毒舌キャラになってしまう。
「めんどくさいから黙ってよっか」まさか、古民家の時もそんなことを……?(笑)
さてBパート。
予算が圧倒的に足りないと焦る由乃ら。そこへ雨宮が吉報をもたらす。あのプトレマイオスがライブに来てくれることになった、と。
ここからどんどん雨宮のペースに呑み込まれていくことになる。悪意がないだけに、邪険にも出来ない。むしろどう考えても建国祭にはプラス材料である。ここまではまだ由乃らの判断は間違いではなかった。
実際に雨宮は有能である。テレビ局といっても内部の人間が自由に報道できるわけではない。放送に値するニュース価値が必要になってくる。そのためにはテレビ局自体を巻き込んで当事者にするのが一番である。ライブを局で事業化してしまえば予算がつけられる。さらにそれを宣伝する口実も生まれる。間野山にとってはプトレマイオスのような大物を呼んでもらえるうえタダで宣伝までしてくれる、いいこと尽くめなわけだ。
この辺のローカル局との「間合い」のようなものは、私が実際に自主映画を製作した時に学んだ経験知である。何事も経験はしておくものだ。
「でも、だけど、でも、だけど……戦わない奴らはみんな否定から入る。だから間野山はいつまで経ってもしみったれたド田舎なんですよ!」
ここ好きなんだよなあ、雨宮の過去が垣間見られて。
彼もかつて間野山を盛り上げようと奮闘した時期があったに違いない。しかし「でも」「だけど」の事なかれ主義、前例主義の連中に足を引っ張られ、一度は故郷を見限った。ここへ来て由乃らという、志を共有できそうな存在が現れた。自分にとっても未練を果たすチャンスだと思ったのだろう。
夕方のニュース、「町おこしガールズ」という不本意な扱いで紹介される由乃ら。
丑松がプトレマイオスのことを言い間違えてしまうというネタを入れるため色々バリエーションを考えたのだが、「冷凍マンモス」を思い付くのに三日は掛かった(笑)。
雨宮の強引なやり方に不安を抱きつつも、丑松が「来場者6千人」という途方もない目標を掲げた手前、どうしても頼らざるを得ない。そして問題は商店会へと移っていく。
商店会、青年会、各団体との合同会議。
初期プロットで自分自身でも指摘したように、ただ建国祭を実行するだけではドラマとして弱いという問題があった。そこで、C級グルメでの一件以来わだかまったままの商店会と観光協会とが一時的にせよ協力体制を築くべく奮闘するようにしよう、と考えた。
一度に大勢のキャラが議論する会議シーンというのは、作画のみならず脚本も大変である。私は『金八先生』や『鈴木先生』が好きなのでディスカッションを描くのは苦ではない。23話「雪解けのクリスタル」でもBパートほぼ丸々使っての会議シーンがあるが、あれも書いていて楽しかった。
クイズ大会で間野山クーポンを配りたい、だが市からの補助金はそういう用途には使えない。協賛金も思ったより集まらず、商店会を頼るしかない状況。
「それはそっちの都合だろ」
畳屋の岩下のきつい一言。本屋の野毛にしても、観光客が増えてもウチには何のメリットもないというのが本音である。商店会といえども一枚岩ではない、そこが難しいところだ。
由乃らがこれまで積み重ねてきたものがここで活きることになる。まずはフレンチの熊野。続いて喫茶店のアンジェリカ。木彫り師の辰男と一志。間近で彼女らの奮闘を見てきただけに、協力してもいいと名乗りを上げる。そしていよいよ千登勢が動く。間野山全体にとっての祭りなのだと判断したうえでのことだ。また引き籠もりだった凛々子があれだけ活動的になったのも由乃らのおかげだと内心では認めている。
こうして建国祭は最高の形で幕を開けることになる。