実質、『黒子のバスケ』で私の最後の作品となるのがこの第9巻特典のOVA。
個人的な事情だが、第三期は『なつやすみの巨匠』プロジェクトと時期が被ってしまったため2クール目は一本も書けなかった。
やっと合流できた頃には本編のシナリオはほぼ完成しており、しょんぼりしていたらプロデューサーから「では最終巻のOVAは入江さんでお願いします」と。
恐らく映画化の話は既に決まっており、シリーズ構成の高木さんはそちらに関わっていたのだろう。
こうしてOVA「第75.5Q 最高のプレゼントです」は生まれたのだった。
原作の最後のコマで描かれた、キセキの5人とのストバス写真。
あれを膨らませて一本のストーリーにして欲しい、と。
かなりの難題であるが、ファンにとっても実質的なエピローグとなる作品だけに気合いは十分だった。
黒子と青峰の拳コツンとか、「こんな美味しい場面、やっちゃっていいんですか?」と恐縮するくらい。
ちなみに桃井にストバス参加を促す男前な赤司は大原Pの発案。ここ、良かったよねえ。
一番大変だったのはストバスのシーン。
第52Q「オレのもんだ」での試合シーン補完も大変だったが、こちらは完全にオリジナルである。
誰と誰を組み合わせるか、どうゲームを運ぶか、キャラ同士の因縁にどう決着を付けるか。
試行錯誤しつつ組み立てていった。元の絵がない分、作画はもっと大変だっただろう。
最後の火神邸でのパーティーではカメラがぐるりと一周し、キャラ全員を余すところなく描くという監督のアイディアも秀逸だった。
『黒子のバスケ』という愛すべき作品。この仕事をやっていて数年に一度あるかないかの、幸せな出会いだったと思う。
おかげさまでOVAは評判も良く、私にとっても「最高のプレゼント」となった。