
江戸川乱歩原作、船越英一郎主演、名探偵・明智小五郎シリーズ第二弾。今回はかの有名な『怪人二十面相』。
前作『黒蜥蜴』が局内でも評判で、ぜひシリーズ化をとの声で実現した。
いよいよ私の新たなライフワークになりそうな予感。
誰もが知っている『怪人二十面相』だけに、使える原作はいくらでもあると思われるだろう。が、彼が主に登場するのは少年探偵団シリーズの方で、明智小五郎はちょろっとしか出てこない。
考えてみたら、明智と二十面相がバチバチにやり合う、大人の鑑賞に堪えうる原作って何かあったっけ?
そう、二時間の尺でそのまま使えそうな長編原作がないのである。
だとしたら守るべきは二十面相の様式美。それによって(ないはずの)原作の雰囲気を保ちつつ、オリジナルストーリーを展開させる。これしか打開策はない。
よって今回は非常に難航した。
全部で四つの事件を二十面相が起こすのだが、それらを全て違うバリエーションで魅せなければならない。
また、最後まで正体不明の覆面男で終わらせることは出来ない。そんなオファーに応じるキャストなどいないからだ。
前回のキービジュアル同様、明智と対峙するメインゲストとして登場しなければならない。覆面なのに。キャスト表を見ても正体が徳重聡さんだというのは丸分かりであるし、それでいい。要は「怪人二十面相と対峙しつつ、倒叙ミステリー風に見せなければならない」のだ。この矛盾した要求に応えるにはどうすればいいか。
そこで私は別の原作からキャラクターを持ってくることにした。
『悪魔の紋章』の宗像隆一郎。
法医学の権威で明智と同等の頭脳を持ち、彼をギリギリまで追い込んだ強敵である。
今作では犯罪心理学の権威と設定を変え、明智のライバルとして立ちはだかる。しかし実は彼こそが……という構造。
原作ファンの中には「あれ?宗像隆一郎って『悪魔の紋章』じゃね?」と気付いた方もいた。これは発明だと思ってほしい。こうでもしないと、一瞬現れては逃げ続ける二十面相では明智とのやり取りが成立しないのだ。
さらに宗像の妻役として京子というキャラも新設。実はこの二人の間には悲しい過去が……という形でドラマ性も補強した。
結果として、かなり上手くいったのではと自負している。
中盤、『JOKER』のように偽二十面相の群れが大暴れするシーンもお気に入り(疑似ではなくナイトで撮影してほしかったが、予算がねぇ……)。
木内文代役の唯月ふうかさんがスケジュールの都合で出演NG。小林(樋口幸平)といいコンビだったのに。残念。
せっかくなのでそれを逆手に取り、中盤でとんでもないサプライズを仕掛けてやった。これに気付いた人は一人もいないだろう。新レギュラー初登場時にしか使えない大ネタ。良い子のみんなは決して真似しないように。
悪のおじさんトリオ、生放送で取っ組み合いのケンカ。こういうのも一度やってみたかった。最たる巨悪の名前を「平蔵」にしたのは要するにそういうこと。
ラストパートの謎の処刑装置、あれ何なん?(笑)
乱歩フリークの監督の趣味全開でしたな(めっちゃお金かかってPから嫌味言われたらしい)。
大ラスの大どんでん返し、あれはかなり早い段階から決めていた。BS-TBSの局長もお気に入りらしい。
というか、あのままだと宗像=二十面相と確定することになってしまう。二十面相に何らかの「定義」をするのは原作リスペクトとは言えない。よってああやって「リセット」することで整合性を保ったわけだ。
逆に言うと、そこさえ遵守すれば何度でも二十面相を登場させることも出来る。これも発明。
大変だからもうやらないけど。
【メインキャスト】船越英一郎、樋口幸平、石川古都、池田鉄洋、徳井優
【ゲスト】徳重聡、東風万智子、並樹史朗、神保悟志、坂巻有紗、笠松伴助
【原作】江戸川乱歩『怪人二十面相』
【脚本】入江信吾
【演出】本田隆一
【企画・プロデュース】井上竜太(ホリプロ)
【プロデューサー】秋山桃子(BS-TBS)、稲葉有也(ホリプロ)
【制作】BS-TBS、ホリプロ