原作は月刊コミックガーデンにて連載中。全世界の猫好きに捧げるコミックのアニメ化。
触れた人間を猫に変えてしまう新型ウイルスにより、世界規模でニャンデミックが発生。
果たして人類は猫をモフりたい衝動に抗い、猫だらけの世界を生き抜くことが出来るのか……!?
猫好きの私にとって、もはやご褒美といってもいい仕事だった。しかも『チ。』『悪役令嬢転生おじさん』に続いてのシリーズ構成。
抜擢の経緯はこうだ。
『俺は全てを【パリイ】する』にサブライターとして参加していた頃、リモート画面の背景に私は愛猫のぽん太(♂)をでかでかと載せていた。
それを見たOLMの増田Pが「ダメだこいつ、ただの猫バカだ」と思ってくれたらしく、今作のシリーズ構成に抜擢して下さったのだ。
そう、この仕事はぽん太が引き寄せたも同然。我が家の招き猫なのである。
今作で特筆すべきは総監督・三池崇史氏の存在。
私も初めて聞いたときは耳を疑ったものだ。あの三池崇史ですか!?と。
彼はOLMとは実写方面でも縁が深いようで、その流れからの就任らしい。
下手な構成でも立てようものなら殺されるのではとビビっていたが、ご本人は至って穏やかで安心した。
そう、この業界、怖そうな人ほど優しく、優しそうな人ほど底意地が悪いのである。
ホン打ちには殆ど参加されなかった三池氏だが、音響監督も兼ねているためアフレコには毎回いらっしゃっていた。
彼の演出を間近で見られるなんて、なんという僥倖!
主題歌もTHE YELLOW MONKEYだし、昭和生まれの自分には興奮要素満載だった。
シリーズ構成のオファーを頂いた当初、原作はまだ3巻くらいしか出ておらず、どうやっても原作を追い越してしまう状況だった。
幸い、コミックには番外編の短編がいくつも載っていたので、ならばそれらを本編に組み込もうと。その間に先生方には頑張っていただいて、話を進めておいてもらおうと。
第2話では脱出劇が一段落したタイミングでカオルとツツミの出会いを挟み、第3話ではニャンデミック前のタニシの日常を冒頭に挿入。本編でスーパーに立て籠もっている場面に違和感なく繋げることが出来た。
この構成を三池総監督が褒めて下さったことは一生の記念である。
このようにユア&リホやマーロウなど、番外編でも人気のあるキャラを本編に組み込むことで物語も逃避一辺倒にならず、バリエーションを多く打ち出せたかと思う。
「話が一向に進まない」といった批判も一部あったが、あくまで主役は猫である。「猫が可愛ければ成立するんじゃい!」と謎の自信を持っていた。
シリーズ全体としてのクライマックスはちゃんと「ヴェンデルシュタイン砦の戦い」で締めることも出来たし、構成当初はそのエピソード自体影も形もなかったことを考えれば上手くいったのではと思う。
シリーズ構成といっても、どれくらい原作に手を加えるかはこのようにケースバイケースなのである。
今回は前述のような理由があったため比較的アレンジ多めだったと思う。それから私の猫愛が炸裂しすぎて小ネタ増量、確か「ニャンデミック」というワードも私が考案した記憶がある。
アフレコ時のエピソードを一つ紹介しよう。
第9話、猫語翻訳機の役はあの大ベテラン、玄田哲章さんが務めることとなった。映画大好きなホークマン先生の遊び心で、翻訳された人語は全て何かの映画の台詞になっている。そこで、どうせやるなら吹き替えのレジェンドにやってもらおうと。
人語を解する不思議な猫・ジョーンズが「にゃー」と鳴いた後に、翻訳機が渋い声で「死にたくなかったらついて来い」などと翻訳をする。そのギャップに視聴者は大笑い、というわけだ。
当日、音響スタッフが玄田さんに軽く流れを説明し、いざ録音。
すると玄田さん、とても渋い声で一言、
「にゃー」
…………?
ブースにいた一同は何が起きたのか分からず、呆然。
「もう一回お願いします」と伝えた後、リテイク。すると、
「にゃー」
ここで三池氏をはじめ、ようやく全員が気付く。玄田さん、自分がジョーンズの役だと思ってる……。
慌ててスタッフが再度説明をする。「あの、すみません、ジョーンズではなく翻訳機の方をやっていただきたく……」
一同、笑うに笑えない状態に。そりゃそうだ。オファーの段階できちんと説明していなかった方が悪い。
怒って帰ってしまったらどうしよう。大事故だぞこれ。
しかし玄田さんはすぐに理解してくださり、
「何だよ、そうなのか。猫の方だと思ってたよ」
まあ確かに『あやかしトライアングル』で思いっきり猫の役やってたしな(笑)。
この作品では他にも色々と貴重な経験をさせてもらった。神谷監督と一緒に京都のマンガミュージアムでトークイベントに登壇したり、LaLa ArenaのVIP席からTHE YELLOW MONKEYのライブを堪能したり。
同い年である神谷監督とはこの作品をきっかけに交流を深めることが出来た。
どうやら彼は私のことを以前からご存じだったらしい。
何と、私が脚本を担当した『ゴールデンカムイ』第11話「殺人ホテルだよ全員集合!!」の絵コンテを描かれていたのだ。
あの話数、リズムもテンポも最高だったよなあ。まさか神谷監督だったとは。
「入江さんのホンはすごくロジカルだからコンテを組みやすいんです。あなた、自分で思ってるより業界内では有名なんですよ?」
そんなことを言っていただけるなんて。光栄である。「もし何かオリジナル作品を立ち上げた際は名乗りを上げさせてください」とまで。
これはもう、やるしかない。
【スタッフ】
原作:ホークマン(原作)、メカルーツ(作画)
総監督:三池崇史
監督:神谷智大
シリーズ構成:入江信吾
キャラクターデザイン:牧孝雄
美術監督:髙尾克己
音響監督:三池崇史
音楽:遠藤浩二
企画・プロデュース:ソニー・ピクチャーズ エンターテイメント、スロウカーブ
アニメーション制作:OLM Division
主題歌:OP『CAT CITY』THE YELLOW MONKEY
ED『Matatabi』WANIMA
【キャスト】
クナギ:水中雅章
カオル:上田麗奈
アラタ:川島零士
ツツミ:芹澤優
レン:木村昴
マサキ:中島ヨシキ
タニシ:安元洋貴
ガク:竹内良太
グランマ:宮寺智子
ケイスケ:興津和幸
スオウ:種﨑敦美
ミツル:鶴岡聡
コウジ:中博史
ガンスリンガー:森川智之
ラストサムライ:堀江由衣
翻訳機:玄田哲章
ナレーション:千葉繁
【各話リスト(名前は担当脚本家)】
第1話「すべてが猫になる」入江信吾
第2話「今宵ねこら星を奪う」入江信吾
第3話「猫の牢獄」村越繁
第4話「猫は無慈悲な世界の王」入江信吾、村越繁
第5話「キャットマックス」入江信吾
第6話「キャットライジング」村越繁
第7話「遊星からの猫D-REX」入江信吾
第8話「ニャルマゲドン」村越繁
第9話「コニャンコー」入江信吾
第10話「ノルウェージャンヌ・ダルク」村越繁
第11話「トランスフォーミャー」入江信吾
第12話「アイ・ミャウ・レジェネコ」入江信吾
