医療捜査官 財前一二三⑥

高島礼子さん主演のシリーズ第6弾。

映画製作発表の会場で、主演女優が毒殺される。人気ミステリ作家が仕掛けた完全犯罪なのか、それとも……。

まず断っておくが、これを書いたのは『なつやすみの巨匠』クランクイン直前なので2014年の夏だ。なぜ放送まで5年も経ってしまったのか。

というより、元々お蔵入り扱いだったのである。

2015年頃からだろうか、視聴率低迷により各局示し合わせたかのように2時間ドラマ枠の廃止が相次いだ。おかげで私は『釣り刑事』を始めとする主戦場を失うことになった。アニメをやっていなかったら路頭に迷っていただろう。

という次第なのでこの6作目に関しても放送は諦めていたのだが、ある日突然ホリプロの井上Pから電話があり、「放送が決まった」とのこと。が、ゴールデンタイムではない。本来なら再放送枠である土曜日の昼間だという。

そんな枠で新作を放送するなんて。要するに在庫一掃セールというわけだ。何もこの作品に限ったことではない。

前作でも思ったが、局は愛がないなあと思う。せっかく大金を投入して作ったものに対してあんまりである。おまけに今回はフジの担当Pが独立したらしく、HPにすら何の告知もない有り様だった。私はそんなまるでアリバイのようにとりあえず流しとけみたいなものを作った覚えはないのだが。

これが出来の悪いものならここまで思うこともなかっただろう。手応えがあっただけに悔しいのだ。
人気ミステリ作家が仕掛けた完全犯罪という触れ込みから始まり、出版業界や映像業界の裏事情、渦巻く野望や嫉妬、二転三転する展開、一人として無駄なキャラのいないゲスト陣、物理トリックと見せかけた心理トリック、ますます磨きの掛かった高島さん西村さん石倉さんのトリオ漫才、どれも本シリーズ最高傑作といえるものだった。

特にミステリ作家のキャラ造形はとても気に入っている。ある理由で露悪的に振る舞っていた彼が初めて心情を吐露する場面は涙なくしては観られない。長谷川初範さんの熱演も見事だった。

何と言うか、テレビで(特に2時間枠で)頭をひねって血を吐く思いでトリックを考案するのがつくづくバカらしくなってくる。ソフト化されることもないし、ほぼ私のオリジナルなのに(刑事の証明と同様)原作もの扱いされてしまう。
どうせ視聴者だって真剣に観てないんだからテキトーでいいんだよ、実際そんな作品ばかりじゃん。なんて甘い囁きに惹かれそうにもなるが、だからといって自分まで同じレベルに堕してしまったらおしまいだ。そう思って気を吐いてきたつもりだ。だがそれも疲れた。同じアイディアとエネルギーを注ぐのならば映画や小説でオリジナルとして勝負した方がよほどいい。

というわけで、(書いたのは2014年だが)実質これが私の最後の2時間ドラマ作品になると思う。

ゲスト:長谷川初範、斉木しげる、香寿たつき、湯江健幸、石井智也、中別府葵ほか
脚本:入江信吾 演出:池添博

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