黒子のバスケ(第三期)

大人気バスケアニメのファイナルシーズン。
原作もアニメも人気を維持したまま綺麗に着地した作品は珍しいのではないだろうか。

そんな第三期だが、個人的には初っ端から試練が待ち受けていた。
原作ではかませ犬っぽかった灰崎のキャラをもっと立たせたいという監督の意向により、福田総合戦をより長く描くことになったのだ。

アニメ一話の分量は原作換算で大体3~4話分なのだが、シリーズ構成上の都合もあり「第52Q オレのもんだ」はいつもの半分にも満たない原作1.5話分くらいしかなかった。

普通にシナリオに起こしてもAパートすら埋まらない。残りはオリジナル要素で膨らませるしかない。

日常回であればどうにでもなるのだが、海常VS福田総合の試合の真っ只中である。
つまりは原作で描かれなかった試合のディテールを自分で想像して補完するしかないわけだ。
原作とかけ離れ過ぎてもダメで、自然な流れのまま灰崎のクズっぷりを際立たせる。
今どこに選手がいてどっちに動こうとしているのか、全て考えなければならず非常に苦戦した。だが逆に言えば、こういう時のために脚本家はいるのである。

結果的にはスタッフの努力もあり、とてもいいアレンジになったのではと思う。
「一つ教えてやるぜ。先輩は敬えってな!」
笠松キャプテンの股抜きドライブのシーンなんか胸が熱くなる。
あんな品性下劣な灰崎でも使わざるを得ないキャプテン石田の苦悩とか、より深く描くことができた。
スキンヘッドをぺちんとはたかれる望月先輩とか、
むっくんの「たくあん一個でも取ったらひねり潰すかんね」とか、小ネタも充実(笑)。

『黒子のバスケ』はスタッフもキャストも素晴らしい方ばかりで、気持ち良く仕事ができたし大いに刺激も受けた。
中でも「第55Q オレは知らない」でご一緒した須之内佑典さんの絵コンテ。
びっくりするくらい絵が上手いの、この人。原作と見紛うくらいに。
もちろんいわゆる絵の上手さとコンテ能力は別物なのだが、実際演出も冴え渡っていたし(赤司のエルボーパスとか神!)、何よりその熱量に私は思わず落涙してしまったのだ。世の中すごい人がいるものだ。

念願のアニメ分野への進出が叶ったこともあり、自分にとって記念すべき作品となった。

黒子のバスケ 3rd Season
第51Q「全力でやってるだけなんで」脚本:高木登
第52Q「オレのもんだ」脚本:入江信吾
第53Q「ジャマすんじゃねーよ」脚本:谷村大四郎
第54Q「もらっとくわ」脚本:高木登
第55Q「オレは知らない」脚本:入江信吾
第56Q「差し出そう」脚本:谷村大四郎
第57Q「笑っちゃいますね」脚本:平林佐和子
第58Q「真の光」脚本:入江信吾
第59Q「ナメんじゃねぇ!!」脚本:谷村大四郎
第60Q「勝つために」脚本:平林佐和子
第61Q「今度こそ」脚本:入江信吾
第62Q「最高の選手です」脚本:高木登
第63Q「青い空の日」脚本:高木登
第64Q「…ワリィ」脚本:高木登
第65Q「僕らはもう」脚本:高木登
第66Q「勝利ってなんですか?」脚本:高木登
第67Q「決勝戦試合開始(ファイナルティップオフ)!!」脚本:谷村大四郎
第68Q「最高じゃねーの?」脚本:平林佐和子
第69Q「奇跡は起きない」脚本:谷村大四郎
第70Q「覚悟の重さ」脚本:平林佐和子
第71Q「これでも必死だよ」脚本:谷村大四郎
第72Q「忠告だ」脚本:平林佐和子
第73Q「諦めませんか」脚本:谷村大四郎
第74Q「お前だったんじゃねーか」脚本:高木登
第75Q「何度でも」脚本:高木登
第75.5Q(OVA)「最高のプレゼントです」脚本:入江信吾

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