水川あさみさん主演の刑事ドラマ。
久々の連ドラ登板。
私にとっては7年ぶりの東映、しかも『相棒』でデビューさせてくれた恩人でもある須藤Pと!
これには面白いいきさつがある。
私がゼロから立ち上げた映画『なつやすみの巨匠』の製作に奔走している頃、東映芸術職の同期だった岩下悠子さんはちょうどこの企画を須藤さんと進めていた。
その打ち合わせの席で「そういえば入江君は元気してる?」「自分で映画の企画を立ち上げたそうです」「ほう、それは偉い。ちょっと久々に会ってみようか」という流れになり、そのままチームに加入することになったのだ。
物事はとかくタイミングだなとつくづく思う。
そして何かに必死で打ち込んでいれば必ず誰かが見てくれているのだ。
さて今作、注目すべきはスタッフの顔ぶれである。
脚本:岩下悠子、櫻井武晴、入江信吾
音楽:池頼広
監督:近藤俊明、森本浩史
プロデューサー:須藤泰司(東映)
分かる人には分かる。まさに『相棒』の初期メンバーそのもの。
狙ってのことではなく、須藤さんが「信頼できるスタッフを集めた」結果がこれだったのだ。
そこに自分が加われたことが光栄である。
メインライターの岩下悠子さんは『刑事のまなざし』でもお馴染み。
私とは東映芸術職の同期であり戦友でもある。
骨太かつ味わい深い作風で、最近は小説でも活躍中。
そして切り札は櫻井武晴さん。
『ATARU』『名探偵コナン 絶海の探偵』等、実績はもはや言うまでもなかろう。
相変わらずキレッキレかつ濃密なホン。いつこの人インプットしてるんだろう。ほんとバケモノ。
私の担当回は第3話「殺意の対価」と第6話「都知事暗殺」。
「殺意の対価」はわずか10円の時給の差で殺人を犯してしまうフリーターの女の子の話。
ずっと温めていたモチーフをやっと使うことが出来た。
飲みの席で一言で説明すると須藤さんは「それいいな、採用」と即決。
一言で言えるモチーフと意外性が効いたようだ。
私自身も、それこそ初期の『相棒』でやってもおかしくないような人間のどうしようもない性や弱さを描き出すことが出来て気に入っている。
しかしながらネットでは「んなバカな」とか「そんな動機ありえない」とかちらほら散見され、悔しい思いをしたものである。
何でかなあ。犯行に至るまでの積み重ねや悲哀も描いているし、時給制のバイトをやったことがある人なら大体頷いてくれると思うのだが。
「都知事暗殺」は須藤さんがいつか使うつもりでいたプロットを拝借した。
彼、その気になれば自分でも書いちゃうからなあ(事実『9係』でも数本書いている)。
都知事の暗殺を巡り、『スティング』のような駆け引きやどんでん返しを狙った。
東映のシリーズもので必ず一本は入ってくる、いわゆる撮影所メインの話だ。
ゲストの森カンナが思っていた以上にその、ナイスバディでドキリとした。ええ。
キャストの皆さんも気持ちのいい方ばかりで嬉しかった。
まず水川さんがもう人格的に素晴らしいのなんの。サバサバした雰囲気でスタッフへの気配りもさり気ない。
この人のおかげで現場はどれだけ助かっただろうと思う。
憧れの生瀬さんとも仕事できたし、『ゴンゾウ』で大ファンになった菅原さんにもやっとそれを伝えることが出来た。
打ち上げでは近藤公園さんが仰って下さった言葉が胸に響いた。
「台本が届くのをいつも楽しみにしていました。毎回面白いホンをありがとうございます」
またこのメンバーで仕事がしたいなと心から思う。
ただ数字が芳しくなかったのが非常に残念だ。クオリティは悪くなかっただけになおさら。
要は売り方の問題で、本来であれば「『相棒』のスタッフ集結!」と大々的にやれば良かったのだが、まさか他局の人気番組にあやかるわけにもいかない。それで何とも歯切れの悪い売り出し方になってしまった。
宣伝は大事だなあと思った次第である。
キャスト:水川あさみ、生瀬勝久、菅原大吉、近藤公園、キムラ緑子、中村雅俊